患者さんが気を付けなければならないこと①

■仲良
「東石さん、糖尿病腎症の進行を食いとめるために心がけねばならないことって、何かありますか?」

■東石
「そうじゃな。透析が検討され始める時期というのは、ステージでいうところの第4期で、第5期を迎えると、もう進行を食い止めるというよりも腎臓の機能を維持し、低下させないことに主眼が置かれるようになる。
わしが思うには、自覚症状が出始める第3期で、適切な処置と療法を行うこと、そして、透析が検討され、実際に透析が開始される第4期においても、元々の疾患である糖尿病の進行を食いとめるべく、処置と療法が肝要であるように思うんじゃ!
これまでも繰り返してきたが、大切なのは、食事と運動。
しかし、食事においては、実際に透析治療が開始されるようになるに至ると、それまでの食事療法とは若干異なるので注意が必要じゃぞ!
まず、その目的が若干、変わってくる。」

■仲良
「どのように目的が変わってくるんですか?」

■東石
「糖尿病の段階では、血糖コントロールを目的とするが、糖尿病腎症に至ると、それに加えて、腎症の進行防止も視野に入れにゃならん
だから、内容も適切なエネルギー量の中で必要な栄養を過不足なく摂ることに加え、たんぱく質や塩分、カリウムの摂取を制限する必要が出てくる。
たんぱく質は、炭水化物や脂質と並び、必要不可欠な栄養素じゃが、その摂取が制限される必要がある。
体内の余分なたんぱく質は、尿素などの老廃物となり、腎臓でろ過されて尿中に排泄される。腎臓の機能が低下している人がたんぱく質を摂り過ぎると、老廃物を排泄するための腎臓の負担が大きくなり、そのことが腎症の進行を早めてしまうんじゃ。
腎症の治療は、たんぱく質の摂取制限などにより、腎臓の負担を軽くして、残っている腎機能をできるだけ長く保ち、腎不全への進行を防ぐことが重要になる。

■仲良
「腎不全への信仰を防ぐ方法として更に気をつけなければならないことはなんでしょう?」

■東石
「単にたんぱく質の摂取を減らしただけでは、指示エネルギー量を満たすことができなくなる。
そこで、たんぱく質を減らす分は、炭水化物や脂質の比率を増やして補うんじゃ!
たんぱく質は、血液や筋肉を作り出すなど、栄養素としての役割があるからのぉ~。
一方、ヒトのからだはエネルギーの補給を最優先させるので、炭水化物や脂質によるエネルギーの補給が十分でないと、たんぱく質が本来の目的に使われずに、エネルギー源として利用されてしまうんじゃ、
それを防ぐために、必要な炭水化物・脂質は十分に摂らなければならん。炭水化物と脂質を増やすことで、たんぱく質は栄養素として効率的に活用され、腎臓に余計な負担をかけずにすむようになるんじゃ!
炭水化物を増やすことで血糖コントロールが乱れるようなら、薬物療法など他の方法でコントロールする必要があるかもしれんの…。

■仲良
「他に気をつけなければならないことは?」

■東石
「そうじゃのぉ~あとは、塩分とカリウム…。
腎症が起きるとからだに塩分が溜まりやすくなり、その結果、血圧が上昇する。高血圧は、腎症の進行を加速させる重大な原因のひとつ!
このため、腎症の食事療法では、食塩の摂取も制限することになる。
また、腎症が進行すると、カリウムが尿中へ排泄されにくく、血液内のカリウム濃度が高くがちじゃ。
カリウムが多過ぎると、頻脈〈ひんみゃく〉や心不全が起きやすくなるので、やはり摂り過ぎに注意せにゃならん!
あと、運動の方じゃが、腎症の悪化が進むような運動はしてはならん!
微量アルブミン尿期で血糖コントロールが良い状態が続いていれば、通常の運動で問題ないが、蛋白尿が間欠的にみられるようになると、運動によって尿中の蛋白が増えないことを検査で確認しながら運動強度を決めるのが妥当。
蛋白尿が持続的にみられるようになると、血糖コントロールを目的とした運動療法は行わなくなる。
ただこの場合も、動かずにじっとしていたほうがよいのではなく、検査で腎臓やその他の臓器の機能を確かめながら慎重に運動療法を進めていくことで、血糖低下以外の運動効果を引き出すことができるようになる。
まぁわしのように腎症が進行して人工透析を受ける人が増えておるが、そういう患者さんも軽い運動を続けると、骨量の減少を防ぐことができ、身体の活動レベルも高まり、生活範囲が広がるなど、効果は少なくないんじゃよ!」