糖尿病腎症における腎臓の症状とは?

■仲良
「東石さん、糖尿病腎症の合併症について教えていただきましたが、そもそも腎臓はどのような症状になるのでしょうか?」

■東石
東:そうじゃな、今日は、糖尿病が進み、糖尿病腎症になった場合、一体腎臓はどのような症状になっているか?ということに関して改めて、説明してしんぜよう!
そもそも 糖尿病は、主に膵臓から分泌されるインスリンの不足により、血糖値が上昇してしまい、その結果、さまざまな合併症を起こす疾患というのは前にも説明したとおり。糖尿病を患い、血糖コントロール不良な期間が継続すると、通常、三大細小血管合併症である神経症、網膜症、腎症の順に合併症が出てくるというのも説明したかな?
腎症の出現には10~20年かかるが、早期には微量アルブミン尿(腎症2期)、その後、蛋白尿(腎症3期)が出現し、ネフロ-ゼ症候群になることも多く、徐々に腎機能が低下し、腎不全に至るんじゃよ!
現在、透析を始める患者さんの原因となる疾患ではもっとも頻度が高い疾患といえるじゃろう!」

■仲良
「症状としては、ほとんどの場合、すでに糖尿病と診断されていますよね?」

■東石
「そうじゃな。つまり、腎症に特有の症状はないんじゃ。蛋白尿が高度になり、ネフローゼ症候群を呈すると、むくみ(浮腫)が現れてくる。
検査と、臨床経過じゃが、糖尿病は、尿検査に異常が現れる前から、腎臓に病変が作られる。いわゆる、腎症1期;腎症前期と言われる状態じゃな。糸球体の基底膜が厚くなってきて、そこから小さいタンパクであるアルブミンが微量に漏れるようになってきて、腎症2期:早期腎症期を迎える。
さらに進行すると、病変は広がり、糸球体に結節なども作られるようになると、蛋白尿が明らかになりこれが、腎症3A期:前期顕性腎症期、さらに腎機能の低下も認められるようになると、腎症3B期:後期顕性腎症期。さらに腎機能が悪化し腎症4期:腎不全期をむかえ、透析療法が必要になる腎症5期:透析療法期を迎えることになる。なお、血尿はほとんど認められず、あってもごくわずかでしかないんじゃ!
診断にあたっては、早期に診断するためには、尿検査で微量アルブミンを測定し、30mg/日(mg/gCr)以上であれば陽性で、早期腎症と診断される。
糖尿病を長く患い、神経症や網膜症を合併している患者さんに、微量アルブミン尿や蛋白尿が認められるようになれば、糖尿病性腎症と考えられる。ただ、これらの合併症が認められない場合や血尿を伴う場合は、他の原因によることも考えて、腎生検が奨められるんじゃ!」

■仲良
「腎生検?です?あまり、耳になじみのない言葉のようですが?」

■東石
「腎生検に関して、少し説明しておこう!
腎生検では、典型的な場合、基底膜の肥厚を主体とした「びまん性病変」、「滲出性病変」、「結節性病変」が認められることになる…。
経過予後としては、腎症1~2期の期間は非常に長く、10~20年かかる。
けれど、3期以降になると、進行はきわめて速くなって、2~5年で透析に至ることになり、しかも、ネフローゼ症候群になると、むくみ(浮腫)の管理に難渋し、透析導入期には心不全を起こすことも稀ではない。
また、心臓血管合併症(心筋梗塞など)も多く、生命予後も決して良くはない…。
治療としては、早期に腎症の診断をして、インスリン治療を含めた血糖管理をすることが大切ですなんじゃ。腎症2期までは、厳密な血糖管理によって腎症の進展を遅らすことができますが、それを過ぎると、血糖管理による進行の抑制はできないといわれており、治療には早期診断が非常に大切であることがわかる!
また、高血圧を合併し、早期から糸球体過剰濾過を起こすため、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)やアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)を中心に降圧治療が強化される。
むくみ(浮腫)に対しては、塩分制限を行ったうえで、利尿薬を使用。糸球体過剰濾過による腎機能悪化を防ぐ目的で、早期からの食事療法(蛋白制限)も行われる。

■仲良
「なるほど、透析の段階まで及ぶというのはかなり進行してからということになるのですか?」

■東石
「そう。とにかく、透析の段階まで及ぶというのは、糖尿病腎症がかなり進行してからのこと、やはり打つ手とすれば、早期の段階で、わしのように糖尿病腎症に至らないよう、生活習慣、食事、運動を見直し、投薬に関してもきちんと医師と相談しながら進めてゆくことが大事じゃ!
仲良くんもわしのようになる前に、しっかり今の状況に向き合いながら、治療と毎日の生活を続けてゆくよう努力したまえ!」