■仲良
「東石さん、今日もまた日々の生活ついていろいろとお伺いしたいんですが、
透析治療を受けながら仕事をしてもいいのでしょうか?」
■東石
「血液透析の治療目的(目標)の一つは「社会復帰」!
仕事をするのは、体調さえよ良ければ、問題ないじゃろ。
時間が不規則な仕事の場合でも、 会社側とよく相談して、勤務時間の調整をしてもらえば良い。
重要なことは、担当の医師とコミュニケーションをとり、 きちんとした体調管理を行い、お体を第一に!無理をしないようにすること。
これを忘れないで、より楽しい生活を楽しんいただきたいものじゃのう。」
■仲良
「ところで色素沈殿は防ぐことができるんでしょうか?」
■東石
「特に女性の透析患者さんを悩ませていることの1つだと思うんじゃが、
色素沈着は命に関わることではないが、女性にとっては(男性も) 美しく生活できることも重要なことであり、透析の目的が社会復帰であることも考えれば、より楽しい社会生活にも重要なことであろう。
さて、色素沈着の原因じゃが、ベータ・リポトロピンという 物質が原因であることが、ほぼ解明されたのじゃ!
この物質はメラニン細胞を刺激して、皮膚を黒くさせることがいわれておるが、 これが透析患者さんの場合は、正常値の10~数十倍の濃度があるといわれておる!
このほかに、尿毒素の一種であるウロクロームやウロエリチンという名前の 物質が皮膚に沈着して、透析患者さん独特の、色素沈着を起こすのじゃ!
一度、色素沈着がおこってしまうと、なかなかとれん。
治療方法としては、ハイパフォーマンス膜と呼ばれるダイアライザーを用いて 透析を行い、十分に毒素を除去するのですが、これも、完璧に色素沈着を 防ぐことはできないんじゃ。」
■仲良
「透析を受けている方は、妊娠、出産は可能なんでしょうか?」
■東石
「透析をお受けになっている方の出産例について、きちんとした統計はないが、1996年に東京女子医大の東間先生という先生が 172例の妊娠例を報告されておる。
この報告に入らなかった方がいるじゃろうし、妊娠はしても出産に 至らなかった方もいるものと考えられるが…。
2002年の現在では、200例をこえたくらいではないかと私は 推測しておる。
わしが通う病院でも、妊娠・出産をされた患者さんがいらっしゃる
妊娠する前から、当院と近隣の産婦人科、それに総合病院の 腎臓内科・産婦人科・小児科の合わせて5つの科で連絡を取り合って、 十分に準備をした上での計画妊娠・計画出産っだったようじゃ!
出産までの経過を、先生から聞いた話に基づいて話をすすめるが、まず、妊娠から月日が経過すると、おなかの中で赤ちゃんが大きくなるから、 それに合わせてドライウェイトを調節しなければならん!
あまりドライウェイトを大きくしすぎると、心臓に負担がかかったり 「羊水過多」という合併症を生じたりするから、慎重に決定する必要がある。
透析を受けている方の妊娠の場合には赤ちゃんの発育が 十分でない(いわゆる未熟児で生まれる)ことが多いことが知られており、この原因の主たるものは尿毒素のためと思われておるから十分に毒素を取り除くために、 透析時間を伸ばしていく必要がある最終的には一回5時間、週6回透析が行われたらしい。
出産は、赤ちゃんへの負担をなるべく少なくする目的から 産婦人科の主治医は帝王切開を選択したそうじゃ。
しかし、通常の経膣分娩の報告もあるので、必ず帝王切開になってしまう、 とは限らないらしいぞ!
上記のようにいろいろな工夫をしても、赤ちゃんは 未熟児(現在は低体重児と呼ばれます)だったので、 NICU(小児科の集中治療室)に入院となったそうじゃ。 退院まで3か月近くかかったと聴いておる。
妊娠・出産には、ご家族と、医療スタッフの協力が何よりも必要!
ご家族、主治医の方とよくご相談されたほうがいいじゃろう!」
■仲良
「視力の低下や 、耳鳴りを感じたり、口の苦味が抜けないという話をよく聞きますが、これは透析と関係があるんでしょうか?」
■東石
「透析を受けている患者さんに視力・聴力・味覚といった感覚器の障害は 時々みられるらしい。。
ただし、いずれの症状にしても、すべてを透析のせいにしてしまうのではなく、 別の病気が隠れていないか、それに対していい治療法がないかどうか、 眼科や耳鼻科を専門にしている先生に診てもらうことが重要だと考える!
視力の低下についてじゃが
視力の低下が、透析患者さんに特有の症状かといえば、 それは違うような気がするの。視力障害の原因としては、白内障・緑内障・ 眼底出血・網膜剥離などといった目の病気があるが、 これらの病気は、透析を受けていない人たちにもみられるもの。
腎臓を悪くされた原因が糖尿病の方たちには、上記の目の病気が しばしば合併し、視力の障害が問題になることが多いじゃが、 糖尿病でない方にこれらの視力低下が多いという印象は持っておらん!
耳鳴りについてじゃが、
これはとても難しい症状。
透析をお受けになっているかいないかの関係なく、多くの耳鳴りは 原因がよくわからず、また、有効な治療法もないことが多いそうな。
手元の文献を調べてみたが、透析患者さんに耳鳴りが多い、 というものは見つからなんだ!
私がこれまで診てきた印象でも、透析患者さん耳鳴りが多いという感じはしないのう。 ただ、耳鳴りとは異なるが、「耳閉感」といって、トンネルに入った時に よく経験する「耳が詰まる感じ」は透析を受けていて、たくさん除水をすると 起きることがしばしばあるらしい。
このような場合には、透析と透析の間の体重増加を極力少なくする (つまり水分制限じゃな)か、可能であればドライウェイトをあげることによって 対処することが可能じゃ!
また、口内の苦味の感覚が抜けないこともあるそうじゃ。
これは透析患者さんによくみられる合併症!
おそらく尿毒素が悪影響をおよぼしていると考えられるので、 透析効率を強化し、十分に毒素を除去するようにするが、これでも口の中の苦みがとれない方がたくさんいるらしい。
亜鉛不足が味覚障害の原因となることが知られておるので、 亜鉛の補給をすることがあるが、これも無効であることが珍しくないらしいぞ!」