高血糖状態が長期間にわたり続くと、細い血管の集まっている部分の一つである腎臓にも、深刻な障害を起こします。糖尿病によってダメージを受けやすいのは、腎臓の紳小血管と呼ばれる部分です。
腎臓は、体内に必要ない不要物や毒になるような血液中の老廃物を尿として体外に排泄し、必要なものは血液中に再吸収するという重要な働きをしていて、これを「ろ過」と言います。この、ろ過機能を受け持っているのが、細小血管が集中している糸球体という組織です。
糖尿病によって糸球体の細小血管が損傷を受けると、老廃物をろ過する機能が低下してしまい、不要物や毒になるものが体内に残ってしまいます。そして逆に、からだにとって大切なたんばく質は尿中に捨てられてしまいます。
腎症の初期には、糖尿病患者の尿にたんぱくが出てきます。ですが、この段階では、なんの自覚症状もありません。 糖尿病腎症は、比較的進行しても自覚症状の少ない病気なのです。
「腎症」が進行し、さらに悪化すると腎臓がほとんど動かなくなって「腎不全」となり、最悪の場合には、「尿毒症」という致命的な病気に陥ります。
腎不全の末期になると、失われた腎臓の機能を機械に代行してもらう人工透析という治療を受けなくてはならず、多くの生活制限が出てきてしまいます。新しく人工透析治療に入る患者が毎年1万3000人以上いますが、糖尿病が原因と考えられる患者数が1番多いと言われています。