■仲良
「東石さん、透析を受ける人は1日摂取する水分が制限されると聞いたのですが、それはどのような理由からなんでしょうか? 」
■東石
「この件については、わしの体験をもとに話をすすめよう。
昨年の夏くらいまでは、水分管理が厳しいという感じはなかったんじゃ。毎日500mL~800mLくらいの尿が出ていたことと、暑い季節にはしっかり汗をかいていたからのう。食事のたびに飲む水や仕事の時に飲むコーヒーは1日2~3杯、1日3回の薬を飲む時の水も普通にコップ1杯ずつは飲んでおった。尿が出るのは本当にありがたいことで、あまり水分を管理するという意識はなかったんじゃよ。それが昨年の9月頃から急に尿の量が極端に少なくなってのぉ。いろいろなことが重なって、さまざまなストレスを感じたことが原因だったのかもしれん。そして、今は完全な無尿状態…。
初めのうちは自分自身では気がつかないもので(単にうかつなだけかもしれんが…。)、どうも透析のたびに計る体重が重くなるなぁくらいに思っておったんじゃ。以前は中1日空きで1kgの増加、中2日空きでもせいぜい2kgの増加だったのが、現在は中1日空きでは3kg、中2日空きでは4kg近くの増加になっておる。長い間、体重が増えすぎるという経験をしてこなかったので、今まで通りの量を飲んでしまう…。これではやはり体にはよくない。」
■仲良
「えっ?一体何がよくないんですか?」
■東石
「何がよくないかというと、透析時に体への負担が出てきてしまうからじゃ。透析が終わる時間が近づいてくると、どうにも息切れのような負担感がある。特に月曜日の透析はとても疲れるようになってのう…。
文献によると「透析が開始されてからの1日の飲水量は1000mL以下を習慣づける」とある(「1日の飲水量は800mLに抑える」という文献もある)。この文献に従えば1日空きでも2日空きでもわしの飲水量は多いといえるじゃろう。
なぜ水分管理が必要なのかというと、透析で取り除く水分量が多すぎると透析中に血圧低下を引き起こしたりするからなんじゃ。他には水が溜まりすぎて血圧上昇を招いたり、心臓に負担がかかったりする。以前尿が出ていた時は、体重の増加はそれほどではなかったので体への負担はあまり感なかったが、今は出なくなった分も全て透析で取ろうとしていることで体がダイレクトに疲れを感じるのかな、と思うんじゃ。
尿が出ていた頃と出なくなった今を比べると、この違いは体に明確に現れてくる。いけないのは尿が出ていた頃の感覚で水を飲んでしまうこと…。そこで透析患者の水分摂取についてきちんと調べてみることにしたんじゃ。」
■仲良
「ほっほー、それで何か重要な発見がありました?」
■東石
大切なことは「体に入る水分量」と「体から出される水分量」のバランスを取ること。
「体に入る水分量」じゃが水分は飲料水からだけではなく、食事の中の水分や、摂取した食べ物が消化・吸収されるときに生じる「代謝水」と呼ばれる水分もある。これらは基本的に血液に取り込まれて、健康な人ならば尿として体の外に排出されるんじゃ。
「体から出される水分量」は、健康な体であれば尿が一番多いが、腎機能が低下するにつれ徐々に減少する。この他に便による排出と、汗・呼吸での排出があり。呼吸によっても若干ですが水分が排出されるんじゃ
透析が始まり尿の量が少なくなってくると「体に入る水分量」と「体から出される水分量」のバランスが崩れ、過剰な水分が体の中に溜まっていってしまう。これがむくみの原因となり、心臓に大きく負担をかけ、心臓に水が溜まってしまい心臓が大きくなるといった重大な問題を引き起こす。このような問題が起きないよう「体に入る水分量」のうち特に飲水量を適正に抑えて、体内の水分量60%となるドライウェイトを保つ必要があるんじゃ。
透析と透析の間が中1日空きの場合は、ドライウェイトの3%以内、中2日空きの場合は5%以内を目標にして水分摂取量を調節する。次のように計算すると中1日空き、中2日空きそれぞれの目標体重を算出することがでるんじゃ!」
<< 透析間での目標体重の目安 >>
・中1日空きの目標体重 = ドライウェイト × 1.03
例)ドライウェイトが60kgの場合:60kg × 1.03 = 61.8kg
(増加できるのは1.8kgまで)
・中2日空きの目標体重 = ドライウェイト × 1.05
例)ドライウェイトが60kgの場合:60kg × 1.05 = 63.0kg
(増加できるのは3.0kgまで)
■仲良
「水分の管理のほかに、塩分の管理も重要とお伺いしましたが?」
■東石
その通り!水分管理に合わせて塩分管理も大切になってくる。人間の体は体内の塩分濃度を一定に保つ機能が働くため、塩分を多く摂取してしまうと体内の塩分濃度を薄めようと体が水分を求めてしまう!。塩分を多く摂ると水分の摂取量が増えてしまうのはそのためなんじゃ。普段の食生活で塩分を抑えていくことが水分管理の鍵となる。
とにかく、普通の人のようにのどが渇いたからといって、水をカブのみできるわけではない…。
それが透析患者の辛いところなんじゃよ…。